支部長あいさつ

 薬学科S56度卒の坂元です。昨年から宮崎の支部長をさせて頂いております。

  卒後約40年経ちますが、学生時代に戻れるものならもう一度やりたいことがあります。

 当時中央線中野駅北口から歩いて15分くらいに位置する上高田の3畳間のアパートに住んでいました。中野駅北口を出るとサンモールアーケード街があり、中野ブロードウェイへと続きます。ブロードウェイの上部の階はマンションになっていて当時沢田研二さんや青島幸男さんなどの著名人のお住まいがありいつも憧憬の眼差しをもって通り過ぎておりました。それに対して上高田アパートの家賃は月に6000円くらいでもちろんトイレ台所共同でお風呂なし。1日の家賃が200円、今では考えられないことですね。ちなみに住めば都でした。

 ここから市ヶ谷のキャンパス(いまの薬学の学生は知らないですね、懐かしいかぎりです)に通ってました。1コマ目の講義に間に合うためには730分に上高田を出る必要がありました。通学の道すがらブロードウェイマンション1F横の西友前に中野珈琲館というお店がありました。歩いているとかぐわしいコーヒーの香りが大脳辺縁系を刺激します。誘惑にあらがえずついつい珈琲館に寄ってしまうのでした。

 サイフォンで淹れたてのコーヒーと焼き立てのバタートーストの組み合わせのモーニングが300円、何故か一日の家賃より高いモーニングに心を奪われるのでした。さらに店内ではFENが流れており、スティービーニックス(フリートウッドマック)の気だるい歌声とウルフマンジャックのあおるDJのコラボレートに聴きほれていると時間を忘れることしばしばでした。

 こうなると当然1コマ目の講義には間に合いません。 何故かスルーしてしまう講義は独語と生薬学のどちらかでした。独語は追試で何とかなりましたが残念ながら生薬学の単位は成就することは叶いませんでした。

 さて前置きが長くなりましたが、もし学生に戻れるとしたらやりたいことは生薬学の講義を受けることです。聞くところによると6年制に移行した薬学部には「臨床生薬学」のような講座が設けられているらしいです。しかし現在の私には受講は今叶いません。よって民間治療薬から漢方薬への流れの中で生薬の臨床的応用を現在独学で勉強しております。正確に表現するとステイホーム中に始めたのです。還暦過ぎてのストレスの無い手習いのようなもので、特に面白いのは歴史です。傷寒論に始まり、面白いのは山脇東洋、吉益東洞、華岡青洲と続く近代から現代の生薬学、漢方学を支えた先達の歴史です。また単味の生薬から先人がハーモナイズした漢方薬の勉強も少しづつ始めております。R275日開催の九州沖縄地区の理窓会支部長ZOOMミーティングでは抗ウイルス抗菌作用のあるスイカズラの蔓;忍冬とスイカズラの花;金銀花の話題が結構興味を持っていただいたようで、結構盛り上がりました。

  このような勉強をしていると、学生の頃の不勉強を猛省する毎日です。

  忘れてはいけないことのひとつに理科大薬学には高木敬次郎先生を筆頭に素晴らしい研究者、教育者が過去に数多くおられたことです。このことは薬学に限らず東京理科大学全体についても言えることです。

 現在在学中の学生諸君はこの歴史ある校風と誇りを胸に刻み、後悔することのないよう勉強に励まれることを切に望むのであります。

 さらに我々理科大OBはこの歴史的校風を継承し後輩に伝達する役目をもつのではないか、宮崎の支部長に着任させて頂き以上のような所感を持ちました。

 僭越ながら誠に要を得ませんが以上をもちまして支部長の挨拶にかえさせて頂きます。

 

 理窓会宮崎支部長コラム

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