理窓 2017年1月号
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10 1年間に鉄をどのくらい作っているか、そしてどのくらい使っているか。オリンピックプールの約3万杯分。金(きん)は、人類始まって以来 3杯分です。それでは、石油は、富士山をさかさまにして一杯分で量るとして、人類がこれまでで消費した量は富士山何個分でしょうか。富士山一杯に 2兆バレル入ります。人類始まってから使ったのは1兆バレル、正解は、富士山の半分。富士山がいかに大きいかということを示しています。 身の回りに面白いことが、いっぱいあります。桜の太い木は、蝉が卵を産みやすいので、卵がかえったら地面に落ちて、地下に潜ります。そして、7年後には地上から出て蝉になります。蝉はなぜ7年というのを知っているのでしょうか。それがずっと不思議でなりませんでした。セミに関する本はほとんど全部読みましたが、詳しいことはどれにも書いてありません。蝉の幼虫は地下に潜り、根の先まで移動して、樹液を吸います。樹液の温度が夏は暖かい。それが7回目だ。ということで7年目とわかるのではないか。これが私の出した結論です。 空はなぜ青いか。よく実験でやります。空気中の酸素とチッソが青い光を散乱して、青く見えると説明されています。じゃ、雲はなぜ白いのですか?雲の正体は水滴。水滴の大きさは0.01mm で、光はすべての波長が反射され、散乱します。だから、雲は白いのです。次は、夕焼けはなぜ赤いかです。青い光が反射され、残っているのは黄色と赤。これが目に入って、夕焼けは黄色から赤の色に見えるのです。 私が、中高で、よくやる実験が、酸化チタンを水に溶かした実験です。酸化チタンは、私の光触媒の材料である100オングストロームの小さな白い粉、微粒子です。これに光を当てると、光が当たっているところは、黄色になります。空は青く、夕焼けは黄色になることを実験で簡単に示すことができるのです。 銀などの金属を水の中に入れて、紫外線を当てると、起電力が発生するという、光のベッケル効果。このテーマが面白いと言われて、研究を始めました。水の中で酸化チタンに光を当てると、水が電気分解され、酸素が発生します。この発見で私は大感動しました。しかし、これは水素ができる量が少ない。そこで、微量で効果的なものがないか研究することにしました。酸化チタンを塗った板に光を当てると、大腸菌が死ぬ、緑黄菌が死ぬ。自動殺菌です。今では手術室の壁、床に光触媒は使われています。 研究は面白い。そして、世界に役立つ研究であることが大切だと思っています。 偉大な科学者に学ぶことが大切です。ピタゴラス、アリストテレス、ガリレオ・ガリレイ、ニュートン、ボルタ、デビー、そして私が尊敬するファラデーについて学んでほしいと思います。良い本を読もう。中国古典に学ぶ 良い本を、静かにゆっくりと読んでほしい。 「之を知る者は、之を好む者に如かず、之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」、「一年の計は穀を樹うるに如くはなく、十年の計は木を樹うるに如くはなく、終身の計は人を樹うるに如くはなし」、「天知る、地知る、我知る、人知る」、最後に、「台上一分鍾、台下十年功」。舞台の上で1分間踊ることを許されるには、台の下で十年間修業が必要である。何事も努力が必要で、自分を高める努力を一生続けることが大切のだと思います、と締めくくられました。学長 藤嶋 昭 記念講演講演テーマ「科学のおもしろさと光触媒の現状」記念講演会時間 15:30~16:30会場:図書館3階大ホール会場:図書館3階大ホール

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