理窓 2016年10月号
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201.はじめに 私は,1995年基礎工学部電子応用工学科を卒業し,1997年に修士,2000年に博士の学位を頂きました.同年に郵政省通信総合研究所(現在の国立研究開発法人情報通信研究機構)に就職してモバイルネットワークに関する研究に従事しました.2007年に同研究所を退職して,東京理科大学工学部第一部電気工学科の教員となりました.学生時代の専門分野はカオスやニューロコンピューティングに関する基礎研究でしたが,現在ではそれらの理論を応用しながら無線通信ネットワークやその最適化に関する研究を行っています. 2.カオスニューラルネットワーク 大学に入学してから学部3年生までは,興味を持てる科目がなかなか見つからず,あまり真剣に勉強ができていませんでした.このままではまずいと思ったのが,学部4年生になって研究室に配属されるときでした.学生時代の最後の1年間は,勉強に集中しようと決め,当時一番厳しいと噂されていたディジタル画像処理の研究室に入りました.まだ研究を知らなかった当時の私にとっては,画像処理は興味が持てる分野だと感じ,真剣に取り組めるとも思っていました.  卒業研究を始めてみると,新しいアイデアを自分で作り出していくことがとても楽しく,興味を持って取り組むことができました.同じ研究室には当時助手だった池口徹先生(現在,工学部情報工学科教授)の指導でカオスという難しそうな理論を研究しているメンバーが何人かいました.カオスを研究していたメンバーは,国際学会や学外の勉強会に積極的に参加していました.カオスを用いると新しいことができそうだと感じ,卒業研究が終わり大学院に進学する頃には,カオスに興味が移っていました. 私が卒業研究を行っていた1994年頃は,カオスニューラルネットワークを用いた組合せ最適化に関する研究が注目を集めていました.組合せ最適化問題とは,例えば,最短経路の探索のように,サイズが大きくなると組合せ数が階乗のオーダーで増加し,最適な解を得ることが非常に難しくなる問題です.私の研究では,カオスニューラルネットワークを用いてアルゴリズムを駆動する新しい手法を提案し,従来研究よりも格段に有効となることを示していました.ジャーナル論文も一生懸命に書き,海外の雑誌にも複数採録され,学生としてはかなり良い研究業績を挙げることができました.この業績のおかげで,就職活動はとても順調で,博士後期課程3年の時には複数のポストの内定を頂きました.指導教授(伊藤紘二先生)の勧めで郵政省通信総合研究所(現,国立研究開発法人情報通信研究機構)に就職することになりました.3.ユビキタスネットワーク 郵政省通信総合研究所にはニューラルネットワークに関する研究を行っている研究室がありましたが,入所してみると私が配属されたのは無線通信ネットワークの研究室でした.その頃の私は,無線通信に関しては当然ど素人で,割り当てられた仕事をこなすことだけでも本当に大変でした.現在では,スマートフォン(携帯電話)で移動中にもインターネットにつなげられるのは当たり前の時代になりましたが,私が就職した当時(2000年)は,モバイルインターネットはまだほとんど普及しておらず,研究所にとってはとても重要な研究テーマでした. 私が主に担当していたのは,ユビキタスコンピューティング(ユビキタスネットワーク),最近研究・・開発最最前線(3)(3)長谷川長谷川  幹雄幹雄((平7基工・電子応工))

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