理窓 2016年1月号
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16・1 理窓11薬の発見があったことが分かりました。それは家畜の寄生虫に劇的な効果を示す動物薬イベルメクチンでした。ところが、この薬はミクロフィラリアと呼ばれる小さな線虫が人間の目に入って失明させたり、皮膚に入ってものすごく痒くさせたりする病気にも効くことが分かったのです。馬場: 大村先生はもともとのエバーメクチンからイベルメクチンに改造したわけですから、いわば発見者であり、キャンベル先生はそれを人への応用にまで研究された方で、それがノーベル賞の共同受賞となったのです。若い人たちへのメッセージ馬場: ここからは現役の研究者、あるいは後輩たちにメッセージをお願いします。大村: 人が成功するには非常に大事なことがあります。その一つは、人との出会いを大切にすることです。茶道の精神に一期一会という言葉がありますが、「袖触れ合う人を自分の人生の中に活かすことが大切である」と伝えたいのです。妻の支えがあったからこそ馬場: 受賞が決定した際の記者会見で、先生は奥様に心の中で報告したと答えました。もし、奥様がご健在ならば一番喜んで下さったと思います。授賞式に奥様をどのようにしてお連れするのですか。大村: 小さな写真と額を用意してポケットにそっと入れていこうと思っています。彼女は一番厳しい時を支えてくれました。感謝することが3つあります。微生物への感謝、共同研究者への感謝、そして妻への感謝です。馬場: ありがとうございました。東京理科大学の大学院を修了した大村先生がノーベル賞を受賞したという栄誉をいただいたことは、私たち理科大関係者にとっても大変な名誉と勇気をいただきました。 ホームカミングデーの講演会には600人を超えるほど多くの人が集まりました。80歳とは思えないほど矍鑠として、説得力のある話しぶりで、参加者の心を惹きつけていました。利休帽をかぶられた大村先生(右)と進行役の馬場さん(左)利休帽をかぶられた大村先生(右)と進行役の馬場さん(左)2000年「理窓」に掲載されたご功績「理窓」1月号第2回坊っちゃん賞大村智氏 微生物代謝産物研究に関する世界的な権威。米国微生物学会ヘキスト・ルセル賞。日本学士院賞ほか受賞多数。北里研究所長。理博・薬博。「理窓」7月号2000年度ナカニシプライズ受賞「ナカニシプライズ」は、日米両化学会で選考委員会を設け、受賞者を決定する。受賞対象は生物現象の解明に有機化学、天然物科学及び生物有機化学の研究分野で顕著な業績を挙げ、国際貢献に寄与した研究者。大村智君は微生物代謝産物の研究では世界の第一人者です。受賞に心から敬意を表します。

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