理窓 2015年4月号
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15・4 理窓31 平 朝彦先生は、卒業式での記念講演にあたり神楽坂校舎の近代科学資料館や「数学体験館」を訪ね、数学アートなどを体験されました。理科大の16名の創始者の話から、そのすばらしい建学の精神が、今もこんなにも息づいている大学は他にはありませんと講演の冒頭で述べられました。 ユニークであることの大切さ,チームの大切さなど、示唆に富んだすばらしい講演でした。○我が歩み 私は仙台市に生まれ、小学生の頃は化石が好きで、貝の化石を見つけては、かつてここは海だったのかと感動したものです。東北大学の研究室の雰囲気にあこがれ、こんな研究室で研究ができたらと思っていました。 高校は仙台二高で、小学生での興味とは全く無関係のヨット部に入部しました。この部活は大変ユニークで、自主独立の運営をしていました。ここでの経験が私の人生に大きく影響しています。チームで活動することを学んだこと、そして、海が好きになったことです。 東北大学では、地質学古生物学教室で学びましたが、砂の流れ方や砂がどうやって堆積していくのかに興味を覚え流体力学などを研究していました。ここでは、教室で授業を受けるよりフィールドに行くこと、現場で学べと教えられました。このことは、私の座右の銘になっています。 先生の勧めでアメリカのテキサス大学で学ぶことになりました。地球科学を学んだのですが、学生は7名、とんでもないところに来たものだと思っていました。ところがこの集団は、優秀な研究者の集まりであって、1つのテーマに関して徹底して討論する雰囲気がありました。当時は英語力が不足していて、答案は最少の英語で済ませ、あとは得意な絵で説明を書き込むようにしたところ、教授に評価されました。アメリカでは、他人と違うことをやることが大変評価されます。記念講演記念講演 その後、東北大学に戻りましたが、縁あって高知大学に勤めることになりました。あこがれの研究室を持てるようになったのです。高知大学も当時からユニークな大学で、坂本龍馬にあこがれて高知にやってきた学生がいたりしました。ここでも、フィールドに出て地層などを調べました。地層は綺麗に層になっているのが普通です。四万十層は層がめちゃくちゃでどうしてできたのか説明できませんでしたが、あるときプレートが沈み込むときに堆積している砂と混じり合ってできたのではないかと気がつきました。いい仕事ができたと思っています。○ザ・チーム 海洋研究所に所属が変わって、海洋を舞台にプレートの沈み込みあるいは地球の歴史の研究に携わるようになりました。プレートの動きやそのメカニズム、プレートテクトニクスの研究や地球を分析するためにいろいろなプロジェクトに参加してきました。地球プロジェクトもその1つですが、それは決して一人でできるものではなくチームでやることが必須でした。 齋藤ウイリアム氏は、「ザ・チーム」で日本人は個人としては非常に優秀だが組織になるとその優秀さが消えて意思決定ができなくなるという特徴があるといっています。チームは単なるグループではありません。イノベーションを育てるのはチームであり、チームは非常に大切です。私が皆さんに送りたいメッセージは、「新しいチームを作って活躍して欲しい」ということです。いつもチームというものを心にとめていて欲しい。チームの活動から新しい概念が生まれるし、新しい世界が作られます。16人の創始者たちは、まさに明治時代のチームでした。その精神を引き継ぎ頑張ってください。講師 平 朝彦 先生独立行政法人海洋研究開発機構 理事長

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