理窓 2015年4月号
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24新社会人に望むこと 新社会人の皆様は、今後の人生をどのように切り拓いていくか、期待と不安があると思います。私が長い教員生活を経て母校東京理科大学にお世話になっておりますが、その長い教員生活の中では、教育行政で事務吏員として勤務したこともありましたし、管理職として学校の教育課程編成、人事管理、会計の管理等の業務に携わってきました。様々な職務を通して、自分に備わった経験値の中から大切と思われるものを皆様へ送ります。・・採用から20年 昭和51年、東京理科大学を卒業して神奈川県立高校の教員になり、当初は教科指導とクラス経営について試行錯誤をしておりました。自分のスタイルが出来たのは10年くらいしてからです。 優しく接して厳しく指導すること、裏切られたと感じても生徒を信じる姿勢を貫くこと、こうしたことが自分の職務、使命であると気付き、それからは学級経営も楽しくなりました。教員の仕事には教科指導、学級経営、部活動指導などの生徒の指導に関する業務がありますが、これ以外に分掌業務と呼ばれる校務があります。異動もあり、3校を経験するころになると、この分掌業務もほとんどの分野を経験し、仕事に自信が持てるようになりました。それが新採用から20年くらい経過したころでした。・・人と関わる力 本当に忙しくなったのはそれからです。勤務校が神奈川県立高校改革推進計画の再編対象校になり、別の学校と再編統合して新たな仕組みの学校を作り上げる業務に携わり、これを機に教育行政にも関わることとなり、自分の職名が2年、短い時で1年のサイクルで変わりました。45歳から60歳までのこの間は業務量も多く、責任も重く、密度の濃い日々を過ごしました。忙しくなってからの私が、最も心にかけたことは、人と積極的に関わることです。再編統合では、対象校同士の連携、教育委員会との連携が欠かせませんし、教育行政に携わってからは、様々な室課との調整、現場の校長との連携が欠かせません。人と関わることで業務が円滑に進むことを学びました。・・課題解決力 もう一つ学んだこと。それは、身の回りの課題に気付くこと、そして、その課題を解決する工夫を、組織を挙げて実行することです。 教育も業務改善、教育指導の改善が求められており、工夫次第で学校が良いと評価されるようになったり、いつの間にか評判が下がったりします。工夫すべき事項は、身の回り至る所に存在し、その課題に気付き、優先順位を付けて解決を図ることで、魅力的な学校に変わっていきます。おまけに、前向きな組織には優秀な人材(職員)が育ちます。課題に気付き、スピーディに改善を図ることで、生徒が育ち、教員も育っていくのです。では、どのようにして課題に気付くか、それは簡単で、常に生徒、保護者、県民の目線で、企業であればお客様本位で業務内容が適正かどうかを考えれば良いのです。どんな社会でも、職員のやり易さを優先させた、内向きな発想が、課題に気付く力を減退させ、課題解決を遅らせてしまいます。 さらに、組織にとって命取りになるのが職員の瑕疵による事故です。こうした事故には必ず前触れがあり、課題に気付く力はこうした場面でも発揮されます。日頃から身の回りの課題に気付く努力をしていれば、気付いたことが心にかかり、職員に「どうしたの?」と聞くことで、早め早めの対応ができ、事故を未然に防ぐことができます。 課題解決力のある職場では、日頃から、こうした事故が起きないよう、点検体制が整備されています。課題解決力のある前向きな組織では、こうした姿勢、意識が多くの職員に備わっています。 新社会人に贈る「はなむけの言葉」としてはいささか説教じみた内容になってしまいましたが、私が社会人として学んだことを短くまとめました。これからの国際社会を生き抜く皆様の心にかかって頂ければ幸いです。東京理科大学東京理科大学教職課程指導室 教職課程指導室 田中 均田中 均(51理・数)(51理・数)

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