理窓 2015年4月号
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15・4 理窓15て、きれいに踏み固められたコース上では無用の長物だ。 「試し履きしてるんだよ」と、解説してくれた友人がいたが、試し履きならコースをはずれ、深雪の所でまず靴だけで歩いてみる。次にスノーシューを履いて歩いてみる、そうすればスノーシューの有効性が確認できるだろうし、それこそが試し履きだ。それで有効性が確認できたら、踏み固められたコース上でスノーシューを履くことはないだろう。 登山者の増加は喜ばしいことだが、山岳会に入会して、登山経験者から登山を学ぼうとせず、ネット情報に頼る。そんな登山者の増加が山岳遭難事故の増加を招いていることは否定のしようがない。登山の基本をどのようにしたら伝えられるか、いま登山界のリーダーは頭を痛めているのである。内されている通り、山頂直下には山小屋があるから安心。北横岳は雪山入門はじめの一歩の山として最適ということで、北横岳をめざす登山者の多くは初心者だ。 坪庭を横切り、北横岳の登りにかかる。三ッ岳との分岐の手前までは尾根上ではなく山腹を登ることになるので、登りは急になる。登って行くパーティも多いが、朝早く登ったパーティが次々に下ってくる。ぼくらが登っていくのに、避けるそぶりもみせないで下ってくる。ぼくの方も避けようともしないでどんどん登っていくと、目の前まできてようやく避ける。彼女の顔には、なんであたしが避けなくてはいけないの、「納得いかない」というような不満の色がうかんでいる。登り優先をご存じないらしい。 次に下ってくるパーティは登り優先をご存じとみえて数メートル先で避けてくれたのだが、声かける間もなく谷側に避けてくれた。次々に下ってくるパーティの三分の一は登り優先をご存じなく、三分の一は谷側に避けてくれた。ぼくが現役の頃は、山岳会が登山学校として機能していたから、山岳会に入会することで登山の基本を学ぶことができた。昨今登山をはじめた人は山岳会に入会せず、ネット情報で登山を学ぶようだ。ネット情報にも、登り優先や、避けるときは山側に避けるという基本情報が入っていないはずないと思うのだが、言葉だけではその意味が伝わらないのだろう。 コースはきれいに踏み固められているのに、スノーシューを履いて登っている人の多いこと。ワカンを履いている人も多かった。スノーシューやワカンは、深雪に潜らず歩くための道具であっ岩いわ崎さき元もと郎お  1945年3月、東京大井町に生まれる。東京理科大学中退。63年から69年まで昭和山岳会に在籍、登山の基本を学ぶ。 無名山塾主宰、日本登山インストラクターズ協会理事長。 ホームページ www.iwasaki-motoo.com問合せ先 無名山塾 〒170-0005 東京都豊島区南大塚1-53-8 TEL 03(3942)0087  FAX 03(3942)0392

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