理窓 2015年4月号
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14 永田町に常識があるように、登山界にも常識がある。今回のタイトル「登り優先」は、登山界の常識の最たるもの、と言っていい。「登り優先」を登山のルールだと思っている人がいるが、それは誤解だ。「登り優先」は、登山界の常識ではあるがルールではない。登山者相互の思いやりであり、気遣いなのである。 山登りは、もちろん楽しい。楽しいとは言っても、緩やかな登りならどうってことないが、ちょっと急な登りになるとしんどくなる。息苦しさを少しでも軽減しようと思ったら、歩幅を小さくゆっくり、ゆっくりではあるがペースを崩さないようにリズミカルに登り続けて行かなければならない。息苦しさに耐えられず足を止めてしまったりすると、次の一歩を出すときがさらに苦しくなる。 高尾山のようにメジャーな山で、登山道というより遊歩道といってもいいくらいのコースなら道幅も広いが、一般的な登山道は、余裕をもって登りと下りが行き違えるほどの道幅はない。どちらかが道を譲るしかない道幅なのである。 頂上にむかって登っていくパーティがいる。頂上から下ってくるパーティがいる。道幅が狭くてすれ違えないから、どちらかが脇に避けて譲ってあげなくてはならない。登ってくるパーティの足を止めないように、下りのパーティが避けるというのは自明であろう。しかし、登ってくる側がここらで一息入れたいからと脇に避けて、下ってくるパーティに「お先にどうぞ」と道を譲る場合もある。20人もの人数が登っているとき、1人降りてくるというケースがあったとしたら、登り優先だからといって、その1人を脇に避けさせて20人が当然のように登っていくのは、いかがなものだろう。20人が脇に避け、下ってくる1人を速やかに通すのが気遣いではなかろうか。登り優先に限らないが、決まり事は絶対的なものではなく、ケースバイケースで対応すべきことであろう。 2月21日の土曜日、北八ヶ岳の北横岳に登るべく中央本線茅野駅に降りた。富士山や高尾山を例に挙げるまでもなく登山者の増加は社会現象になっているから、ある程度の登山者の多さは予期していたが、雲一つない青空、快晴の土曜日とあってか、臨時バスが出るくらいに登山者やスキーヤーが繰り出していた。中高年より若者が多いのも、最近の傾向といえる。坪庭に上がるロープウェイも順番待ち。ぎゅう詰めのロープウェイを降り、アイゼンをはいて歩き始めたのは12時半を過ぎていた。 2233mの高さまでロープウェイで上がってしまえば、山頂までは高度差247m。ガイドブックに案はあるがやりであり、こらで一息入れたいからとるパーティに「お先にどうぞ」ある。20人もの人数が登っているスがあったとした登り優先登り優先山は健康の源(21)山は健康の源(21)岩崎岩崎  元郎元郎

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