理窓 2015年1月号
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15・1 理窓7我が航海の軌跡 思えば恥しきことばかり… 理科大在学中4年間、数学に懸命に取り組んだわりには成績が著しく悪く、それはまだ勉強が足りないということだと大学院へ進んで努力を続けることにした。当時、林健児先生が応用数学科の主任教授をされていたので「僕は大学院へ進みたい」と相談に行ったら、「この成績で大学院へ行きたいのか。大学院は病院ではないよ」と発奮する材料をいただいた。林先生にはその後、学位の面等でも大変お世話になり、素晴らしい先生であったが、残念にも2年前の12月に他界された。才能があっても、なくても数学に賭ける 数学の才能は私には全くなかった。数学科に進んだ理由もよく分からない。やらないで悔やむより、やって悔やんだ方がいいと、生涯かけて数学をやろうと思った。誰しも才能があるかどうか、そう簡単に分かるものではない。長い時間をかけて、意欲とか関心とかをもって粘り強く、深く考えていくような能力を育成していくこと、またそのような能力を持っている人間をしっかりと育てていくことが大切ではないか。死に物狂いで生涯をかけてやろうという強固な意思を持っている若者は結果的に伸びるので、決して侮れない。これは数学のみならず全てのことに通じると思う。才能は努力の後についてくる 応用数学科に入学してから50年が経つ。半世紀続けていると、歩みはのろいが少しずつ良くなっている。そこで、最近、世界中の若者たちには「才能は努力の後についてくる。だからずっと続けることが大切だが、続けることは難しい。そのためには興味関心、あるいは目標を持ち、それが強固ならば努力を継続することができる」と話している。したがって教育の一番重要な突破口は興味関心を植え付けることであろう。要するに「好きこそものの上手なれ」の喩のごとく、好きだからこそ上達するのであって、好きにならせることが大切。そのためには 数学教育的にはどういう方法があるかと考えることが重要である。理科大を誰もが一番入りたい大学にする 本当は他の大学に行きたかったという理科大生が圧倒的に多い。でも、入学してみると素晴らしい大学と気づくが、この現象をこれから5年から10年の間に逆転させる。東大、早稲田、慶応が理科大の滑り止めとなるように、同窓生の皆さんと力を合わせて築いていかなければならない。数学教育を考える 数学教育にも深く関心を抱くようになってきた。数学教育と数学の研究を両立させるために、皆が感動するような定理を作りたい。難しい専門用語を使うことなく、小学生を始め、ほとんどの人たちが十分理解でき、奥の深い、美しい定理を。 数学体験館が神楽坂の近代科学資料館の地下1階にできた。入場無料。創立から約1年経たが、15,000人ほどの来場者が世界中から訪れている。数学を体感してもらうという施設であるから、是非遊びに来てほしい。秋山 仁先生 記念講演講演テーマ「流浪の果ての歓喜と悲劇-わが闘争-」会場 図書館 3階大ホール時間 15:30~16:30記念講演会

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