理窓2014年4月号
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14・4 理窓29 安倍政権が誕生して1年3ヵ月。日本経済は円安・株高の進行、企業業績の好転、賃上げなど、1年前と比べて大きく改善しました。世の中の雰囲気は明るくなり、消費も旺盛になって、将来に対する国民の期待も膨らんでいます。 しかし一方で、中長期的にみると不安要素も少なくありません。少子高齢化・人口の減少、巨額の財政赤字、国際政治の混乱、グローバル競争の激化、地球温暖化、新たな感染症や大災害の発生リスクなど、予測困難な様々な要因が日本の先行きを不透明にしています。今後、皆さんを取り巻く社会は大きく変化し、かつ変化のスピードが加速することは間違いありません。 先行き不透明な時代を私たちはどのように生きていけばいいのか、これから社会に出る皆さんにメッセージを贈りたいと思います。◆リスクに対する感性を磨く 私たちは常に様々なリスクに晒されています。万が一、リスクが顕在化した時、いかに適切に対処できるか、いかに被害を小さくできるかが企業の競争力を大きく左右します。何が起こるかわからない、いつ起こるかわからない時代では、私たちはあらゆる事態を想定して、“起こること”への備えをしておく必要があります。 そのために、皆さんにはリスクに対する感性を磨いてほしいと思います。世の中のあらゆる出来事のうち、何が自分にとって重大なリスクなのか、それをいち早く見抜く感性を磨いて下さい。 「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがあります。ある事象が、一見すると全く関係ないと思われる場所・物事に影響を及ぼすことの喩えです。様々な出来事について、それが回りまわって自分にどのような影響を及ぼすのか、そのメカニズムを様々なケースを想定して考える癖をつけることは、リスク感性を磨くひとつの有効な訓練だと思います。ぜひ実践して下さい。◆自ら変革する勇気を持つ 「進化論」で知られるダーウィンは「生き残るのは最も強い者ではなく、最も賢い者でもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」という言葉を残しています。変化し続ける世界では、その変化に意欲を持って対応し、適応できたものしか生き残れません。これは人間も動物も同じです。 変革は危機感から始まります。しかし、人間は自己満足の生き物です。一度成功すると、それに満足し、慢心し、「このままで大丈夫」と考えがちです。現状肯定からは危機感は生まれず、変革も始まりません。 まずは自らの現状を疑って下さい。社会の変化に対し、「このままで大丈夫か」、「何をすべきか」を常に問い続けることが重要です。そして、変えるべき時には、勇気を持って考え方を変え、行動を起こして下さい。◆新たな価値を創造する 今まで価値のあったものが一瞬にしてその価値を失い、新たな価値が取って替わるといった、激しい浮沈が当たり前の時代になっています。このような時代を生き抜くためには、今までにない新たな価値を創造し続けるしかありません。これは企業でも人間でも同じことです。そして、新たな価値を創出する原動力は多様な個性を持つ皆さん一人ひとりです。創造的な仕事は人間にしかできません。前例にとらわれることなく、あらゆる分野に広く関心を持ち、自らの発想で創意工夫することで新たな価値を生み出して下さい。変化に対する感受性を高め、柔軟な発想を持ち続けて、意欲的に新しいことに取り組んでほしいと思います。 新たな価値の創造に過去の成功体験は通用しません。人まねでは何も生まれません。何ごとも自分の目で見て、考え、判断し、行動するという主体的な姿勢が不可欠です。他にやり方はないか、どうすれば解決できるか、自分の頭で徹底的に考え、思考錯誤を繰り返し、能動的に行動することで必ず道は拓けます。皆さんに大いに期待しています。三井生命保険株式会社特別顧問(前代表取締役社長)山本幸央(52理工・経)不透明な時代をいかに逞しく生き抜くか不透明な時代をいかに逞しく生き抜くか

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