第22回 坊っちゃん賞を受賞して~骨代謝研究とダイバーシティ推進に向けて

坊っちゃん賞を受賞して

このたび、第111回東京理科大学理窓会新年茶話会にて、第22回坊っちゃん賞をいただきました。母校の名誉ある賞をいただき、心より御礼申し上げます。この受賞は私のこれまでの道のりを振り返る機会になりました。私は東京理科大学薬学部を卒業後、昭和大学歯学部の助手として勤務しながら、薬学博士号(東京理科大学)を取得、その後、米国テキサス大学へ研究員として留学、昭和大学講師、東京薬科大学助教授を経て、東京農工大学工学部教授に着任しました。骨粗鬆症の発症機構の解明と治療薬の開発、がんの骨転移を阻害する薬剤開発に寄与し、骨代謝疾患の医療に貢献する一方で、文部科学省科学技術学術審議会委員として人材委員会委員長等を担当、わが国の人材養成の政策立案に従事しています。特に、理系の女性研究者の活躍推進に向けて、ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ事業の委員長を歴任し、全国の大学や研究所などの機関をつなぐ全国ネットワーク構築に取り組んでいます。

東京理科大学では薬学部製薬学科を専攻

卒業研究では守屋教授の研究室に所属し、酵素科学の研究に取り組んで、基礎研究に強い関心を抱くようになりました。卒業後は、守屋先生にご推薦いただき、昭和大学歯学部口腔生化学教室に入局することになりました。恩師である須田立雄先生が歯学部口腔生化学教室を立ち上げられた折であり、助手として教育研究の機会を得たことは大変有難く思います。研究室の主要テーマである「ビタミンD」研究は私にとって、未知との遭遇でしたが、「研究者になる」という信念と情熱は人一倍強かったように思います。ビタミンDの分化誘導作用の発見は、世界的に高い評価をいただき、その後の研究人生を大きく左右したと思います。その成果を生かして、母校の理科大で薬学博士をいただいた後、研究員として米国テキサス大学に留学しました。当時3歳の娘を連れての留学生活は忙しいながらも実験に没頭した楽しい毎日でした。

留学の後、昭和大学の講師に

昭和大学では閉経後骨粗鬆症の研究に着手しました。骨粗鬆症はエストロゲンの分泌低下による閉経後骨粗鬆症と加齢に伴う老人性骨粗鬆症に分類されます。閉経後骨粗鬆症は、エストロゲン補充投与、骨吸収(骨破壊)抑制剤、ビタミンDなどの骨代謝改善薬の開発が試みられていました。その頃はラットの動物モデルが主流でしたが、私はマウスの骨粗鬆症のモデルを作製し、炎症との関連を解析し、エストロゲン欠乏による骨粗鬆症には骨髄Bリンパ球およびサイトカインが関与することを報告しました。また、骨選択的なエストロゲン様化合物ラロキシフェンの効能立証にも取り組み、治療薬開発の一端を担ったと思います。研究室の仲間とディスカッションをしながら、昼夜を問わず研究に没頭し、多くの研究成果を出せたことは、大きな財産となりました。

骨粗鬆症モデル(卵巣摘出術)マウスにおける 骨量減少

東京薬科大学を経て東京農工大学へ

東京薬科大学に着任した、1998 年頃は、遺伝子技術の発展により様々なノックアウトマウスが作成され、分子解析が行われていました。私はアンドロゲンをエストロゲンに変換する、エストロゲン合成酵素のノックアウトマウスを解析し、雌雄ともに骨量維持にはエストロゲンが重要な働きを示すことを報告しました。また、リウマチなど、炎症を伴う骨破壊には、プロスタグランジンEが大きく関与することを見出し、炎症と骨代謝の関連を示しました。東京農工大学工学部の教授に着任後は、新しいラボを立ち上げ、骨粗鬆症や歯周病の予防・治療薬の開発、癌の治療薬の研究開発を進めています。また、副学長として、大学運営に取り組んでいます。

女性研究者として

女性研究者は、研究者として成果を出す必要がある一方で出産・育児との両立の問題を抱えています。また近年、女子生徒の理系離れも問題視されています。特に、工学・理学・農学では、PI(研究室の主催者)の女性研究者が少なく、ワークライフバランスの環境支援が求められています。わが国では、性差・年齢・国籍を問わず、多様な研究者が活躍できる環境整備を推進することが必要で、ダイバーシティの視点を推進すべく、文科省の事業も活用しながら、全国ネットワーク構築に取り組んでいます。

後輩へのひと言

若手研究者として、研究を楽しむ環境に飛び込み、ひたすら研究に邁進する時期を大切にすることが重要だと思います。若手研究者の多くが任期制となり、短期間に成果を求められる弊害はありますが、自分のポリシーを大切にして、失敗を恐れない、ネガティブデータこそ重要で、思い通りにならないのが、研究の醍醐味です。

授与式集合写真(前列左から二人目が筆者)

関連記事

ページ上部へ戻る