物性物理学と計算科学と人工知能を駆使した新時代のモノづくり

【受賞歴】
2018.2.19 学校法人東京理科大学優秀研究者賞
【研究室紹介】
私たちの研究室では、様々な物質の巨視的(マクロな)性質を理論物理学の手法や計算機シミュレーションを駆使して微視的(ミクロな)観点から解き明かし、各々の物質が示す多彩な物性現象の背後に隠れた普遍性や法則性を探索しています。また、これらの研究を通して得られた知見に基づいて、私たちの生活をより豊かで快適なものにする新機能性材料や高性能デバイスの理論設計を行い、その実現を目指しています。


1.デバイスの発熱問題の解決をめざす

2000年にクリントン大統領(米国)によって国家ナノテクノロジー・イニシアティブが提起されて以降、電界効果トランジスタの開発は“日進月歩”どころか“秒進日歩”の勢いで微細化と高性能化が進められてきました。一見順調に進んでいるかのように思われる超微細半導体製造ですが、今後更なる微細化・高密度集積化を長期に渡って実現させるためには消費電力と発熱の低減化が不可欠です。この課題を克服するためには、従来の経験に任せた技術だけでは太刀打ちできず、ナノスケールでの熱発生の起源を科学的に解明する必要があります。また、発熱したナノデバイスから効率良く放熱するための新技術開発のため、ナノスケールでの熱伝導現象の解明と制御が世界的なミッションであります。山本研究室は、ナノ材料の発熱と熱伝導を精密に予測・設計しうる理論を世界に先駆けて開発しその応用研究を進めています。

2.身の回りの熱を電気に変える

我々が利用している1次エネルギーの7割は有効利用されず熱として捨てられています。今後、さらに徹底した省エネ社会を実現するためには、これらのエネルギーをリサイクルする新技術の創成が大きな課題です。また、IoT社会の実現のためには数兆個のセンサーが必要という試算がなされていますが、それらを動作させる電源の確保が不可欠であり、これを化学電池のみで賄うことは材料確保と電池交換の労力の観点から困難であり、熱や振動などの環境エネルギーを有効利用するエネルギーハーベスティング(環境発電)技術の発展が求められています。このような背景から、山本研究室では、熱を電気に高効率に変換する熱電材料の創出を目指し、熱電物性を精密に予測・設計できる理論の構築とその応用を行うことを目的とした研究を展開しています。この問題は物性物理学における60年来の難題であり、この問題に真っ向から取り組む本研究の科学的価値は極めて高いものです。

3.計算科学とAIにより水の不思議の解明をめざす

地球は「水」の惑星とよばれ、私たちの体の大半が「水」からできていることから、「水」は私たちの生活に欠かすことのできない最も身近な物質と言えるでしょう。それにも関わらず、水のミクロな構造や性質はいまだに科学の研究対象であり、多くの謎が残されています。本学では「物質表面と水の構造と物性」を解明すべく、ウォーターフロンティアサイエンス&テクノロジー研究センターを設置し、全学的にこの問題に取り組んでいます。山本研究室では、計算科学と人工知能(AI)を駆使して、物質表面の水の構造と物性の解明を目指して日々研究を進めています。

山本研究室の様子


[卒業生コメント]
 高島 健吾 株式会社リコー(工・電2018)

山本研究室では、量子力学やデバイスの知識に加え、研究者としての心構えやあり方を学ばせていただきました。研究室のメンバーは熱意に溢れ、共に喜び、共に励まし合うような暖かい雰囲気で、ここで7年間過ごせた事を本当に幸せに思います。今後、企業で研究していく上で、山本研究室で得た経験を活かし、世の中を豊かにできる新規デバイスを実現させたいです。

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