新年のご挨拶-東京理科大学 理事長 本山 和夫

新年あけましておめでとうございます。理窓会の皆様におかれては、健やかに新しい年をお迎えのこととお喜び申しあげます。

本年は、いよいよ東京オリンピックが開催されます。日本で夏季オリンピックが開催されるのは、実に56年ぶりのことです。

前回の東京オリンピックが開催された1964(昭和39)年を振り返ってみると、戦後の復興から立ち直った我が国は、高度経済成長の只中にありました。経済成長率は高水準で推移し、1968年には国民総生産(GNP)で世界第2位を達成します。当時の本学は、オリンピックから遡ること4年前の1960年に薬学部を、その2年後に工学部を開設し、オリンピックを挟んだ10年間で、志願者数を1,800名から27,000名へと、約15倍にも増大させました。それは本学が、理工系人材に対する需要の高まりを背景に、日本の成長と歩みを同じくして、単科大学から理工系総合大学へと大きく発展を遂げた時代でした。

それから半世紀が過ぎ、我が国を取り巻く状況は大きく変貌しました。急速な少子高齢化の進行により、社会には様々な問題が山積し、経済発展を支えた大学の研究力、企業の技術力も、海外諸国と比較し相対的な低下が指摘されています。昨年もリチウムイオン電池を開発した吉野彰氏(名城大学教授・旭化成株式会社名誉フェロー)にノーベル化学賞が授与され、2000年以降の日本人受賞者は19名(一部受賞時点で日本国籍のない方を含む)となりましたが、その多くは30年以上前に見出された研究の成果が実った、いわば過去の遺産によるもので、昨今の日本の基礎研究が国際的に存在感を低下させていることは周知の事実です。

1990年代半ば以降、競争力を失った企業が次々に中央研究所を廃止し基礎研究から撤退しているなか、このような状況を打開し、再び日本の発展を支えるため、またSDGsに代表される地球規模の課題解決のため、大学、特に理工系大学に対する社会からの期待が一層高まっています。

私たちは、時代の要請に応える人材を輩出し、未来を照らす研究成果を創出し続けるため、3年前に“TUS Vision 150”を策定し、今後15年の本学の方向性を示しました。更に昨年は、visionで描いた未来を実現するため、マイルストーンとなる2021年に向けた中期計画を策定し、本年もこの計画に沿って大学改革を着実に進めていきます。

まず、大学改革の柱の一つである「イノベーションハブとしての大学」を実現する学部・学科再編計画の第一弾として、来年2021年に、経営学部に「国際デザイン経営学科」を開設し、長万部キャンパスで1年次教育を実施します。その後、理工学部に国際系コースを新設し同コースの1年次も合流することで、長万部キャンパスを本学の国際拠点に生まれ変わらせる計画です。一方、基礎工学部の先進工学部への改組と学科の増設、理工学部の創域理工学部への改組と各学科の名称変更と続き、2025年の薬学部の葛飾キャンパスへの移転まで、5年間にわたり再編を実施していきます。

また、学部・学科の再編に際しては、各キャンパスの特徴を明確化しキャンパス整備を行っていく計画です。具体的には、神楽坂キャンパスは都心立地を生かし、データサイエンス・AI分野の充実などサイエンスの拠点として、野田キャンパスは広大な立地を生かし、理工学部を中心としたリサーチの拠点として、葛飾キャンパスは工学部、先進工学部、薬学部の連携によりイノベーションの拠点として整備し、世界から研究者・学生の集う世界レベルの研究拠点を構築します。

既に理工学部創設50周年を期に一昨年よりスタートした野田キャンパスの再構築も継続しています。昨年は正門に向かうアプローチのリニューアル工事が完成し、分野横断型の交流拠点となる新7号館も竣工しました。今年はフレキシビリティの高い実験空間と学生が自由に使える共用部を特徴とした新実験棟も竣工する予定です。その後には、薬学部受け入れに向けた葛飾キャンパスのⅡ期工事、神楽坂キャンパスの再構築も順次進めていきます。

このように、本学の持つ高度かつ多様な力を最大限に発揮でき、SDGsの達成やSociety 5.0の実現に大きく貢献できる学びと研究の場を構築していきます。

来年迎える140周年、更に2031年の創立150周年に向けて、ソフト・ハードの両面で改革を推進し、皆様の母校である東京理科大学が、名実ともに“世界の理科大”を実現し、“Building a Better Future with Science”の精神のとおり、よりよい未来に貢献すべく、教職員一同、努力してまいりますので、同窓の皆様におかれましても、一層のご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

末筆ながら皆様のご健康とご多幸を祈念し、新年のご挨拶といたします。

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