新年のご挨拶-東京理科大学 学長 松本洋一郎

理窓会の皆様、明けましておめでとうございます。学長に就任して2度目の新年を迎えるに際し、これまでの取り組みを真摯に振り返るとともに、次なる飛躍に向けて挑戦するべく、決意を新たにしています。

本学は創立以来、理学の普及を建学の精神として、自然と人間の調和的かつ永続的な繁栄への貢献をめざす教育・研究を行って参りました。これは2015年に国連が採択した「持続可能な開発目標:SDGs」にも通ずるものです。実力主義の伝統を堅持し、幅広い教養教育と、基礎から最先端までの体系的な専門教育を行うことにより、豊かな人間性を備え、国際的な視野を持つ技術者、科学者、そして理数系教育者を輩出しており、各方面から高い評価を得ています。

現在、社会からの様々な要請が顕在化しており、国際性、多様性、外部との連携、ガバナンスの強化により、機動性を活かし、教育の質の確保、柔軟な教育・研究の推進・高度化を行うことが必要となっています。その為には、不断に外部の意見を取り入れ、「社会の公器」として、透明性を高め、説明責任を果たすとともに、真の産官学連携を行い、それらを着実に執行して行くことが必要です。

一方、大学は、自律した個人の集団で、その自律性こそが学術の発展には不可欠であることを、歴史の教訓から学んでいます。各構成員が自由闊達に活動できる場を構築し、自律分散的に生まれてくる研究教育成果を協調させ、社会的価値とするべく、本学が持つ多様性を活かそうと、様々な仕組みを構築して参りました。それらの取り組みと今後の展開について紹介します。

まずは「データサイエンス教育プログラム」の全学導入です。現代社会の基盤技術になりつつある人工知能に関連した教育・研究の推進には、社会からの強い要請があり、大学にとっては喫緊の課題となっています。本教育プログラムは、理工系総合大学のスケールメリットを活かし、すべての学生がデータサイエンスに関する授業科目を履修することを可能にした学部横断型プログラムで、数理統計、機械学習、アルゴリズムなどのデータサイエンスに係る知識・技術をリテラシーとして習得することを目的としています。一定の履修条件を満たすと、認定証が付与される、ユニークなプログラムです。次に「全学的教養教育の推進」です。昨年度設立された「教養教育センター」を中心に全学教養教育推進プロジェクトを展開し、特に、教育の国際通用性を高めるべく、大学院英語コース設置、科目ナンバリング制の導入を計画しています。最後に「リカレント教育」の推進です。今年度から薬学研究科医療薬学従事者向け博士課程コースを開始し、来年度には工学部建築学科夜間主コース開設などを予定しています。

研究面では、「データサイエンスセンター」の設立です。本学には、理工系総合大学として他大学に類を見ない多くの数学、数理統計学の研究者が活躍しており、数理科学の研究とAIの開発研究の推進に適しています。特にAIと人間との協調・協働においては、数学がAIの制御をはじめ、学習データや推定結果の信頼性を高めるために必要不可欠で、高度な現代数学の能力が決定的な意義を持ちます。そこで「データサイエンスセンター」が今後、データサイエンス研究の戦略的推進に大きな役割を果たすことを期待しています。次に「学外研究機関との連携強化」です。神楽坂、葛飾、野田の地の利を生かしての企業や他の研究機関との連携、また、グローバルイノベーションのハブとなるべく、多くの研究機関や企業との連携を進めています。昨年度から今年度にかけて、東京大学、産業技術総合研究所、理化学研究所、自治医科大学、第一生命保険などと教育・研究に係る包括連携協定を締結し、共同研究を開始しています。加えて、教育力・研究力を強化し本学の社会的価値を向上させるために、「企業との大型共同研究の推進」、「国の大型予算事業の獲得」、「包括連携協定の活用」などの検討を進めています。本学の研究の成果を社会実装につなげ、多様な外部資金の獲得が期待されるところです。

今後も、伝統ある「実力主義」の学風を継承し、教育・研究において国際競争力を持つ「世界の理科大」となるため、透明性の高い大学運営を行い、教職員一丸となって様々な諸施策に取り組んで参りますので、関係各位のご支援をお願い申し上げます。

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