新型コロナ対策 知っておきたい! 薬の話

東京理科大学薬学部
上村 直樹 教授

はじめに

私は薬学部で教鞭を執っていますが、薬局経営しているため実務家として薬剤師養成教育を担当しています。新型コロナウイルス対策に役立つ薬の話を薬局薬剤師の立場で提供したいと思います。

ドラッグリポジショニング

皆さん、「ドラッグリポジショニング」という言葉を聞いたことはありますか?初めて聞く方が多いと思います。簡単に言うと「薬の二刀流」のことです。薬を本来の効果とは別の効果で利用することを言います。このドラッグリポジショニングが新型コロナウイルス対策にどのように役立つのかと言うと、睡眠薬は市販薬ではないので、新型コロナウイルスが流行している中でも、病院に受診しなければなりません。移るのも移すのも怖いので我慢してしまいがちです。

しかし、近所の薬局やドラッグストアで買える薬があります。それは「睡眠改善薬」と呼ばれている薬です。なぜ睡眠薬は医師の処方箋が必要なのに、睡眠改善薬は医師の処方箋なしに買えるのか。それは薬の成分がもともと睡眠改善ではない薬だったからです。花粉症などのかゆみや鼻水を止める成分だからです。花粉症の薬を買うときに薬剤師から「車の運転に気をつけて下さい!」と言われることがあります。その理由は副作用として眠気があるからです。この眠気を主作用にリポジショニングしたのです。

これから期待されている薬として誰でも知っている解熱鎮痛薬のアスピリンがあります。これが大腸ガンの薬になりそうで研究が進んで言います。

かかりつけ薬剤師・薬局

高血圧や糖尿病等の疾患をお持ちの方は薬を欠かすことができません。しかし、新型コロナウイルスの流行時にいつも飲んでいる薬が少なくなったら、病院に行かなければなりません。

二次感染を防止する観点から、かかりつけの病院や診療所が電話による診断や処方を発行しても差し支えないという時限的・特例的な通知が2020年4月10日に発令されました。よって0410対応と呼ばれています。電話によって診断・処方され、実際に薬を入手する手順まで示されています。医師から希望する薬局に直接FAXで処方箋が送られます。薬局薬剤師は患者に対して電話で服薬指導を行い、薬は患者宅まで届けたり、郵送したりします。いままで薬剤師は対面で服薬指導することになっていましたが、このような対応が可能となりました。

ここで皆さんにお勧めしたいことがあります。かかりつけ薬剤師・薬局を持つことです。病院を受診したときは、その門前の薬局で薬をもらい、近くの診療所を受診したときも、門前の薬局で薬をもらっていませんか。病院が家から遠い場合は、その門前の薬局も遠いことになります。薬局がバラバラだと薬の配送や電話での服薬指導もそれぞれで発生します。家の近くでかかりつけの薬局をひとつ決めておくことが重要です。自分の薬を一元管理してくれるので、市販薬や健康食品を含めた薬の重複や相互作用の防止、薬の相談だけでなく病気の予防や衛生管理など、健康をサポートしてくれます。今回の新型コロナウイルスの流行時だけでなく災害時などで、かかりつけの薬局や薬剤師が役に立つことが証明されています。

ウイルス対策

今回の流行でウイルス対策が如何に重要か身にしみて分かったと思います。そこで少し役立つ話です。

●マスク
飛沫感染を防ぐため必需品ですが、使い捨てとして利用されていた不織布マスクですが、実は洗って再利用できます。洗面器の水に洗剤を入れて、10分ほど浸し、軽く押し洗いします。脱水機には入れずにそのまま天日で乾かします。

●消毒用アルコール
消毒用に使用されるアルコールにはエタノールにイソプロピルアルコールが配合されたものがあります。その理由はなんと酒税から逃れるためです。エタノールは酒税法上の「酒類」として扱われますが、イソプロピルアルコールを配合することで一般アルコールとなり加算額が課されないというカラクリです。また、濃度80%が最も殺菌作用が高いのです。理由は80%より高いと殺菌作用を示す前に、揮発してしまうからなのです。

まとめ

ウイルスとの戦いだけでなく共存への考えも持たなければなりません。ペストに代表されるようにウイルスが時代を変えてきたと言われます。これまでのやり方では通用しません。頭の中を切り替えて新たな生き方に挑戦していきましょう。

関連記事

ページ上部へ戻る