政策を工学的に検証し、電気の新たな時代を描く

研究分野
電力システム工学と呼ばれる、電力システムを効率的に運用・制御するための研究をしています。
カーボンニュートラル社会に向けて、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを最大限に活用できる電力システムが求められています。電力を大量に経済的に貯蔵する方法は限られているので、基本的には、電力の消費と供給は時々刻々一致している必要があります。そのため、再生可能エネルギー発電の出力が天候によって変化してしまうとき、何らかの方法で、電力需給が一致するように調整しなければなりません。火力発電所の出力を変更するのか、他地域と電力を融通するのか、発電所ではなく電力需要を増減させるのか。何が最も経済的で、停電を招くことなく、二酸化炭素排出量を少なくすることができるのかを数理最適化という手法を用いて分析しています。
社会貢献として、経済産業省「未来の教室」STEAMライブラリーにてエネルギー教育のウェブ教材を作ったり、総合資源エネルギー調査会系統ワーキンググループ委員、電力・ガス取引監視等委員会制度設計専門会合専門委員として、微力ながら精いっぱい活動しています。政策が、研究室をベースとした日々の工学的研究から得られた知見で検証され、よりよい電力供給の在り方を示したいと考えています。

研究例:日本全体の水素・火力・水力発電所の8760時間(1年分)の運転の最適化による政策検証

日本全国500基以上の火力・水力・原子力発電所の運転をコスト最小となるように運用することで、太陽光発電の出力をどれだけ制御しなければならないか、送電設備がどの程度必要になるのか、蓄電池はどの程度効果があるのか、水素発電をどのように運用すればよいか、などを定量的に検証することができます。将来的には、こうした定量分析が、経済成長と地球温暖化対策が両立する電力システムの政策立案に貢献することを目指します。

JST CREST EMS HARPS OASIS(写真)
研究に関連する基礎情報として、気象衛星画像、卸電力取引所取引、電力需給の情報を可視化し、外部に公開しています。
http://psel01.ee.kagu.tus.ac.jp/harps/oasis/

研究室紹介
研究成果の外部発表は、研究を通じて学ぶべき重要なことの一つです。山口研では、学生が国内・国際会議で発表できるように指導しています。修士の学生は、論文を投稿することを目標に設定しています。例年、複数の学生が発表賞を受賞しています。
ゼミ合宿では、就職してからは訪問することができないような発・送電設備等の見学を行っています。

卒業生コメント
秋吉 亮佑 株式会社関電工(工研・電気工学専攻2017)
山口研究室では、配電システムの電圧や電流の高速計算手法を開発しました。国際会議の発表や論文の掲載を経験し、達成感があります。修士課程修了後、東京電力ホールディングスに就職し、現在は関電工に出向して、お客様との接点となる電力システムに関する仕事をしています。常に研鑽の日々ですが、学生の頃に学んだことも活かせており、大変充実しています。

関連記事

ページ上部へ戻る