医療経済データサイエンス

研究室紹介
菅原研究室は、2017年に発足しました。データサイエンス手法の開発と、医療経済学分野への応用を中心課題としています。このうち基礎となるのは、データを分析するための方法であるデータサイエンスであり、統計学や機械学習といった分野を含んでいます。

ビッグデータによる介護保険制度の分析

研究紹介  医療経済データサイエンス

日本は、高齢化に関して名実ともに世界最先進国です。こうした急激な高齢化は、さまざまな社会・経済的影響を及ぼします。急増する介護の必要性に対して、日本政府は2000年に「介護保険制度」を施行しました。制度が始まった当初から、詳細な情報が電子データとして蓄積されてきています。この「介護ビッグデータ」を用いた研究を紹介します。

問題1.
有料老人ホームのリスクプレミアム
「有料老人ホームに入る際の費用支払いに関しては、「入居金制度」と呼ばれる経済習慣があります。これは、利用者が2種類のものを両方支払うというものです。1種類は月額費用と呼ばれ、毎月払うものであり、生活費などに当たります。もう1つが入居金と呼ばれるものです。まずホーム側が「償却期間」という年数を定めます。例えば、5年、10年といった年数が償却期間として用いられることが多いです。そして、この期間の家賃を入居時に一括先払いするのが入居金です。償却期間以上の期間より長生きした場合には、追加の家賃を払う必要はなく、月額費用だけで居住することができます。結果「リスクプレミアム」が生活費に上乗せされ、入居金なしのシステムより支払額が多くなっています。図2参照

問題2.
併設ケアマネージャーのインセンティブの歪
日本の介護保険に独自な制度として、ケアマネージャーが置かれています。現実には、ほとんどのケアマネージャーが併設ケアマネージャー(介護サービス部門を併設する)です。併設ケアマネージャーの行動について、さまざまなデータを用いて比較した結果、以下の歪を見つけました。
歪1「供給者誘発需要」併設ケアマネージャーがより高額なケアプランを作っている。歪2「選択的照会」利益を上げやすい高齢者を併設先に照会し、そうでない高齢者は他の事業者に紹介します。

まとめ

ドレスデン工科大学カーマン教授と
著者(右)ザクセン・スイス地方にて

介護に関わる課題は上記2つに限られるものではなく、さまざまな研究をし、現在も研究領域の拡張を続けています。さらに最近では、日本と同様に介護保険制度を採用しているドイツとの間で国際比較を行うため、ドレスデン工科大学のアレクサンダ―・カーマン教授との共同研究も行っています(写真)。ドイツ以外の国でも介護は共通課題であり、今後もより国際的ネットワークを広めていきたいと考えています。

研究室指導方針
現在のデータサイエンス市場はバブルであり、バブルがはじけた後でも生き残れる、しっかりとした実力をもった学生を育てたいと思っています。具体的には、大学では大学でしか学べないような、数学を中心した基礎力をしっかり身につけるべきだと思います。

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